貧弱貧弱ゥ

数年前からラジコンショップ経由で高性能なリチウムポリマ電池が入手できるようになりました. 従来からあるNiMHやNiCd電池と比較するとエネルギ密度が高く,セル電圧も高いので,機器の小型化,ハイパワー化が可能になります.

しかし,過放電に対して非常に貧弱とのことなので,使用の上では過放電をさせないための工夫が必要です.

セル電圧の監視

ADコンバータが搭載されているマイコンであれば,常にセル電圧を監視し, 一定の閾値を下回ったらシステムを低消費電力状態に遷移させるという処理を走らせておくことにより過放電を防ぐことができます.

重い負荷を切り離すには電源ラインにMOSFETによるロードスイッチを入れるのが有効です. 最近はPchであってもON抵抗が小さくなってきたので,スイッチをいれたことによるロスを無視できるケースが殆どでしょう.

電源監視つきシステムの構築例

LiPoはセル電圧が2.7Vを下回るとダメージを受けるそうです.ですので若干の余裕を持たせて3.0Vで低消費電力状態に遷移するのが良いでしょう.

2セル直列の場合はバッテリ電圧が6.0Vになったときがトリガとなります.6.0Vを検出するための構成を検討してみましょう.

条件
  • バッテリはLiPo2セルを直列
  • 使用するマイコン:ATMEGA88
  • 内蔵している基準電圧の出力電圧:1.1V
  • ADCの分解能:10bit
分圧器の定数

充電直後のLiPoのセル電圧は4.2V程度あります.2直なのでシステムに加わる最高の電圧は8.4Vです. 若干の余裕をみてフルスケールを9.0Vにしましょう. 上側の分圧抵抗の大きさを1MΩとすると下側の抵抗の値は139kΩとなります.E系列で丸めて120kΩが良いでしょう.

結局の分圧比は0.11です.フルスケールは10.27Vになります.当初の8.4Vから大分離れましたが,まあ問題ありません.

ちなみに分圧回路に流れる電流は無駄になってしまうので,なるべく分圧抵抗の値を大きくする必要があります. 無闇矢鱈に大きくしても湿度による絶縁抵抗の変化が目立ってくるので,1M程度が良いでしょう.

また,重要なのが分圧出力に繋いだキャパシタです. 外付けキャパシタがないとADCのホールドキャパシタの充電が完了しないうちにAD変換がスタートしてしまうため,正しい変換結果が得られません. 外付けキャパシタがあれば,ホールドキャパシタの充放電に必要な電荷が外付けキャパシタから素早く補充されるので, 充電不足による変換誤差は発生しなくなります.キャパシタの値は手頃な0.1uFで良いでしょう.

さて,ここで問題になるのが,ATMEGA88の内蔵リファレンスの精度が思いのほか悪いという点です.typ1.1Vですがminとmaxはそれぞれ1.0V,1.2Vです. 要するに最大で±9%もの誤差があります.更に温度係数の記載がありません.ですので極端な温度環境下で使うのは一抹の不安があります. アプリによっては外付けのリファレンスICを使うのが得策でしょう.

なんにせよ,内蔵リファレンスを使う場合は実測による補正が必要になります. 補正の方法ですが,ADCの設定でVrefを内蔵バンドギャップにするとVref端子にVrefの電圧が出力されるので, ピン電圧をテスタで測ることで実際のVrefの電圧を得ることが可能です.

電圧監視プログラム

1秒に一回程度の頻度で電源電圧をAD変換して,AD変換結果が閾値以下になったらシステムを停止させ, かつ,何らかの方法でユーザにバッテリ電圧の低下を知らせます.閾値の値はリファレンスの電圧や分圧抵抗の値によるので適宜計算して設定してください.

物理的な衝撃に対する備え

LiPoバッテリの外装は薄いラミネートフィルムなので,機械的強度は心許ないです.尖った金属辺を突き刺せば穴が開いてしまうでしょう. 金属薄板の筒でできた乾電池と比較すると雲泥の差です.

ですので,ロボコン等の衝撃が加わる環境下で使用する際は,バッテリ自体をケースに入れる等の何らかの防護策を講じるようにしましょう.


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